証券投資

【ESG投資】考え方と選び方|勘違いしてはいけない重要ポイント”2つの側面”

ここ数年、証券業界、そして実業・企業経営の世界でも盛んに謳われるようになった「ESG投資」。

投資家として、また、資産運用を志す者としてマーケットに関わっている人間ならば、この言葉を知らない人はいないでしょう。そんなESG投資ですが、近年では投資信託の世界でもかなり勢いを増してきています。

ただ、そんな「ESG投資」について、果たしてその意義、そして投資対象としてみた場合の位置づけを、あなたは正しく理解できているでしょうか。

今回は、投資初心者の方へ向けて、ESG投資について、その中身を改めておさらいすると共に、考え方として投資判断の中でどのように捉えておくべきか、そういったポイントについてもお話しておきたいと思います。

今後数年は無視できないテーマとなることが確実なこの ”ESG投資” について、今のうちにその捉え方を身に着けてしまっておきましょう。

 

【 YouTube 】

「ESG投資」と「ESG投信」

まずは ”ESG” という言葉そのものについてですが、ESG投資とは、もう改めて言うまでもありませんが、

  • E:Environmental・環境
  • S:Social・社会
  • G:Governance・ガバナンス

の頭文字をとって作られた言葉で、そのまま「イーエスジー」と読むものです。

この言葉は、もともとは2006年に国連が投資家や金融機関へ向けて、その投資判断をより社会的意義のあるものにするために提唱したもので、近年の企業経営における長期的な経営戦略の中の ”価値観” や ”倫理観” としても重要視されるべきものと捉えられています。

最近では、上場企業を中心とした大企業には、このESGに関する取り組みを個別に開示する義務を課すという動きも世界各国で活発化してきていて、実際、そうした ”ESGマネー” を自社へと取り込むためにも、企業側も積極的に開示を行うようになってきています。

ではその目的はというと、ESGに掲げられた課題に積極的に取り組む企業を応援する、つまりそのことを投資判断に取り入れる投資家をどんどん育成し、その結果として、ESGに注力するよう企業の意識改革を図っていくことで、地球環境、世界中にある社会問題の解決を目指そうというものです。

したがって、その具体的な取組課題というのは、主にそうした分野を解決に導けるような活動・事業が期待されているということであり、こうしたESGの考え方に沿った企業群を集めた投信、また、そうした理念のもとで設定された投信のことを「ESG投信」と呼ぶわけです。

 

また、この「ESG」とは別に、「SDGs」という言葉を聞く機会も近年増えてきましたが、SDGsというのは、2015年9月に発表された国連の ”持続可能な開発目標”(S:Sustainable・D:Development・G:Goals)を意味するもので、具体的に17項目の目標課題が掲げられ、2030年までの達成を目指して取り組むことになっているものです。

また、これらとは別に、「SRI」といった言葉もあります。これは「S:Social・R:Responsible・I:Investment」を意味していて、”社会的責任投資” として謳われているもので、ESGとその概念的なものは同じです。ただ、この ”SRI投資” というのは主に ”倫理的視点” を重視しているのに対し、 ”ESG投資” というのは ”環境・社会問題” を強く意識したものとなっているため、その趣旨は微妙に異なります。

ということで、「似たような言葉がよく出てくるけど、結局投資に際してどう捉えておけば良い話なの?」と感じた方も多いのではないかと思いますが、ここからはESG投資の個人投資家としての視点での捉え方、考え方についてお話したいと思います。

ESG投資の捉え方

ESGには、個人投資家として意識すべきポイントが2点あると思っています。

ポイントが2つあると言うよりは、「2つの側面から捉えるべき」だと言った方が正しいかも知れませんが、その2つというのが、

  • 倫理的視点
  • 収益性の観点

これらの視点になります。

まず「倫理観」というのは、”ゴーイングコンサーン”、つまり、「”持続可能な事業” を行っていく」という「会社」そのものがそもそも備えているべき ”存在意義” に照らし、社会的に必要とされている企業なのかどうかということ。

そして、世界中にある社会問題の中でも、各人が個人的に高い関心を抱いているテーマに関し、投資対象となる企業が、それを解決へと導こうとするような技術やシステムを開発しているなどといった価値観に由来する投資判断です。

これは極論で言えば、ある意味で「その収益性を ”度外視” する」ということもある価値基準・判断基準です。

つまり、社会課題を解決に導こうとする企業に対し、「私も少しでも力になりたい」という想いから、その企業を ”応援” する気持ちで投資をする、株式を買うという行動こそが、この倫理的視点による投資判断ということになるわけです。

そこには ”損得勘定” は存在せず、自分ではできないような壮大な活動に勤しむ企業や、素晴らしいアイデアを元に事業活動を行っている企業に対し、「少しでも貢献したい」という気持ちがあるだけです。

こうした投資行動というのはもちろん否定されるようなものでもなく、むしろ称賛に値するものであり、皆がそうした価値観を重視して経済活動を行っていくことができれば、我々みんなの地球、生活環境などがどんどんと良い方向へ向かって改善されていくことになる ”きっかけ” をつくる行動とも言えるものです。

ただその一方で、収益性の観点で捉えた場合にはどうでしょう。

 

これは非常にシビアな考え方にはなるものの、その投資対象は実際にESGに取り組む企業ということになるわけで、実際のところ、間接的に倫理的価値観でESG投資をしているのと何ら変わらないという点は先にお伝えしておきたいと思います。

どういうことかと言うと、まず、大前提として、「今後このAという企業は、ESGに関連した事業を行っており、その意識も高く、対外的な発信も積極的に行っており、本業の発展が見込まれる。」という判断ができた企業に投資を行うということになります。

つまり、ESG投資という潮流にうまく乗れる、またはそこに流れ込むマネーを取り込んで株価上昇が見込まれる企業に対して投資を行うという判断をするわけです。

この場合、その企業が行う事業がどういったものなのか、また、自分の価値観や倫理観と照らし合わせてどうかといった部分は関係ありません。

あくまで ”市場でどう評価されるか” という価値基準のもと、企業・銘柄を選定していくのです。

ただ、この考え方・判断基準というのは決して否定されるべきものでもありません。

繰り返しになりますが、ESG投資を行うということは、その先には実際にESGを意識した経営を行う企業があり、そこへ資金を投入するということは、結局は社会課題の解決を目指す動きに加担していることに他ならないからです。

したがって、イチ個人投資家として、このESG投資をどのように捉えるかということの答えは、この2つの判断基準のうちどちらが自分にはしっくりくるか、そこをまずは考えてみて株式の銘柄、または投信の銘柄を選定するということが大切になってきます。

ただし、当然ですが投資の選択肢というのは何もこれだけに限ったわけではありません。

極論をしてしまえば、ESGの考え方に半ば逆行するような事業活動を行ってはいるものの、とんでもなく利益率が高い企業があって、そこに投資したことで非常に大きなリターンを得ることができるとなった場合には、経済合理性としてはそれが不正解だとは言い切れないわけです。

ESG投資を意識しすぎて低リターンに甘んじるか、ESG投資は頭の片隅には置いてはおくものの、それはそれとて、やはり投資判断としては貪欲にリターンを追求することに主眼をおいて銘柄選定を行っていくのか、そこは個々人に委ねられる部分となってきます。

 

まとめ

ということで、今回は最近巷でよく耳にするESG投資というものについて私なりの考え方をお伝えしてきましたが、間違いなく言えることは、今後こうした社会的な問題意識等に反するような活動や発信を行う企業というのは、遅かれ早かれ淘汰されていくことになるいうことです。

世の中の誰もが情報を発信する武器を持ち、SNSという瞬時にその情報を拡散できるプラットフォームがあるこの世の中において、やはり反社会的、非人道的な動きというものは看過されるほど甘くはないからです。

そう考えると、やはり直接的ではないにせよ、こうした取り組みだけでなく、”意識” の部分で怪しいなと感じる企業、つまり「この企業は口先では綺麗事を言ってるが、実態は非人道的な雇用や反社会的な事業活動を行っているんじゃないのか。」と疑われるような企業というのは、個人投資家が採るべき長期投資戦略には不向きと考えておいた方が良いのかも知れません。

今、世界は過去にないほどに、社会問題に対して敏感になっています。

企業活動の中でそうした反社会的・非人道的な動きが見られた企業には、不買活動やネガティブ情報の拡散といった形で、容赦なく攻撃が加えられ、一時的であるにせよ株価動向にも甚大な影響を及ぼします。

これからの時代の投資というものは、こうした考え方を無視しては成り立たないというのは明らかですので、やはり人として正しいこと、まっとうなことを行っているかどうか、そしてその規模・影響度合いはどの程度のものか、そういった意識をもってマーケットに、そして各々の個別企業に向き合う必要があると言えそうです。

それではまた。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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