三菱UFJフィナンシャル・グループが、業種やグループの垣根を超えた連携によって「スマホ金融」の分野を強化していく構想を描いていることが分かりました。
三菱グループ外の金融系企業、大和証券グループ本社や東京海上ホールディングス、そしてその他にも「金融(フィナンシャル)」と「テクノロジー(テック)」の融合をビジネスチャンスと捉えて事業を展開する ”フィンテック企業” などとも連携し、一体で金融サービスを展開していくことで、「スマホ金融」の分野における海外先進諸国からの遅れを取り戻す方針です。
ところで、そもそも「スマホ金融」とは何でしょう。
【 YouTube 】
『スマホ金融』とは
『スマホ金融』とは、平たく言えば、「スマートフォンの操作で完結できる金融関連サービス」のことで、銀行取引や証券取引、保険への加入やクラウドファンディングへの参加、その他ポイントサービスの運用・管理などをスマートフォン上で行うことを指しています。
ユーザー側の視点では、これまで銀行や証券会社の窓口および担当者とのやり取りが生じていたような取引をスマホ1つで完結させられるため、窓口へ出向いたり担当者に問い合わせたりする手間が省けたり、手続きに人を介さないことで安い手数料でサービスが利用できるなどのメリットが挙げられます。
一方でサービスを提供する金融関連企業にとっても、手軽に自社サービスを利用してもらえることでユーザー層の拡大を図れたり、手続き等のための人員を削減できてコスト低減に繋げられるといったメリットがあるため、利用者および提供者側双方にとって非常に魅力的なサービスと言えるものになっています。
ただ日本では、縦割り行政等の弊害や金融関連の取引等に関して保守的な運用がなされていることから、法整備などの点で海外から大きく遅れをとっており、海外先進諸国のような先進的な取り組みへの評価や特区の活用といった積極性を発揮できておらず、その普及率は非常に低調になっているというのが実情です。
今回、三菱UFJグループという大手メガバンクグループが本腰を入れて開発・普及に取り組み、2021年中にもスマホ向けアプリを発表する予定ということで、これまでの遅れを取り戻し、改めて金融先進国としての地位を確立し続けていくための第一歩が踏み出されたと評価できるニュースと言って良いのではないかと思います。
一般投資家として期待したいこと
前述のように、今回明らかになった三菱UFJグループの構想では、グループ傘下に属さない企業、それも同分野におけるライバル企業などからも参加があるとされていて、これまでの潮流であった自社関連サービスのみを取り扱うといった形のサービスと比較して、ユーザーにとってみれば、幅広いサービスを比較検討・利用できるという点では、資産運用を行う一般ユーザーが享受できるメリットも非常に大きくなってくるのではないかと思われます。
また、2021年秋には「金融サービスの提供に関する法律」が施行されることになっており、幅広い金融サービスを提供、販売・仲介できる「金融サービス仲介業」が新設されることで、今後ますます IT 企業などの金融業への参入も見込れます。
金融とテクノロジーを融合した「フィンテックサービス」というものがどんどんと進化していくことで、我々一般投資家は非常に便利なプラットフォームを利用できるようになる一方、今後は他社グループなどにおいても同様の取り組みが始まっていくものと予想され、より一層熾烈な競争が展開されていくものと思われますので、我々の選別眼も高いものが要求されるようになってくるでしょう。
個人目線で見たこうしたスマホ金融のサービスというものは、IT技術を駆使することで、スマホ等で資産の一元管理ができるといった利便性の向上が期待される一方で、特定のアプリ等を一定期間使い続け、その感覚が手に馴染んでしまった後になって、他のサービスへ乗り換えるとなった場合には、そこには大きな心理的障壁ができてしまうというのも否定できないかと思います。
例えば株式の売買を行うといった場合には、普段から株価やニュース等をチェックする行う使い慣れたアプリ等があれば、そのアプリから他社の新たなアプリへと乗り換えるというのは、非常に面倒に感じてしまってなかなか踏み切れなくなるものです。
したがって我々としては、こうした複合的な金融サービスというものは、どの銀行を自分のメインバンクにするのかといった判断と近いものがあり、様々なサービスがある程度出揃い、横並びでそれぞれの特徴等を比較できる状態になってから、やっと自分の使い方に最も適したサービスを見極められるようになるといった側面があるのも判断が難しいところです。
ただそうかといって、いつ出てくるかもわからない他のサービスを待ち続けている間に、先進的な技術を自分の資産管理等に取り込む機会を逃してしまったり、情報収集の観点でもだんだんとその時その時の時流から取り残されてしまうといったことが起こることも考えられますので、どのタイミングで新たなサービスの利用へと舵を切っていくかという判断は非常に重要になってきます。
そういった意味でも、やはり最も重要なことは、自分の ”運用方針” や ”必要なサービス” といったものをある程度理解・把握した上で、それに本当にマッチするサービスが一体どれなのかということを見極められるようになっているということであり、サービスの比較よりもむしろ主眼を置くべきは、自分自身の運用方針などの軸となる部分を知っているということであると言えるでしょう。
たとえどんなサービスを使おうとも、そのサービスの先にあるもの、つまり ”最終地点” にある「伝統的な金融商品」というものはいつの時代にも普遍です。
投資・資産運用に対する自分の方針とも言える ”軸” をしっかりと確立し、それに沿った判断ができているうちは、こうした新たなサービスの選択・導入においても、判断を間違えてしまうと行ったことは起こりませんので、ぜひ勘違いしてしまわないようにしたいところです。
これから先数年で、こうしたスマホ金融のようなサービスが、一体どこまで拡充されていくようになるのか、非常に楽しみです。